断熱と遮熱の違い
断熱も遮熱も熱の出入りを妨げる働きですが、室温に対する影響は異なります。
断熱の室温に対する影響は、暖房の熱を室内から逃がさないこと、遮熱の室温に対する働きは、太陽の熱を室内に侵入させないことです。
せっかく暖房をしていても断熱性が十分でない場合には、暖かさは外に逃げてしまいエアコンをつけているのに寒いという状況になってしまいます。
また、冬は太陽の陽射しは室内に暖かさを届けてくれるありがたい存在ですが、夏には強い日射で室温を上昇させてしまいます。
どちらの場合もエアコンの効率が低下して、夏は暑い、冬は寒いという外気温の影響をもろに受けてしまいます。
エアコンを効率よく働かせるためには、断熱・遮熱対策が必要です。
断熱対策
住宅の主な断熱対策には、屋根、壁、天井、床、窓や玄関ドアを断熱する方法が挙げられます。それぞれの方法とおおよその費用を見ていきましょう。
屋根の断熱
断熱機能のある塗料で屋根を断熱塗装する方法です。塗料のグレードによって費用が変わることに加え、足場代がかかるので30坪程度の住宅であれば、50〜80万円程度の費用がかかります。
天井の断熱
天井裏に断熱材を敷き込む方法と吹き込む方法があります。天井を外さないで行う場合には3~4日で工事が完了し、費用は8~16万円程度です。
壁の断熱
住宅の壁全体に断熱材を入れるリフォームです。外側から入れる方法と内側から入れる方法があります。住宅の規模にもよりますが数週間から1か月の工事期間がかかります。また、住宅全体を足場で囲わなくてはならないので、一般的な規模の住宅では200~350万円程度の費用がかかります。
床下の断熱
床下から断熱材を入れるリフォームです。1~2日で工事が完了し、費用は8~16万円程度です。
開口部の断熱
窓、玄関、勝手口、テラスなどの出入り口を断熱化するリフォームです。この方法が他の方法に比べて優れている点は、他のリフォームと組み合わせることなく十分な断熱対策ができることです。
その理由は開口部からの熱の出入りが家の中に出入りする熱の多くを占めるからです。
開口部の断熱
住宅の断熱で重要なのが、開口部の断熱性能を高めることです。なかでも窓は、熱の出入りが大きいので、断熱上の重要なポイントとなります。
冬の暖房時に、室内に逃げ出す熱の約6割が窓などの開口部からで、夏の冷房時に、室外から侵入する熱の約は、約7割は窓などの開口部からです。
他の方法でのリフォームで家中の断熱をする場合には、屋根、又は天井に加え、壁、床下を全て断熱しないと、十分な効果が得られません。全部合わせると費用も相当嵩みます。
一方、窓や玄関ドアを断熱化すると他のリフォームと組み合わせなくても十分な断熱効果が得られます。
しかも内窓設置という方法で窓の断熱化をすると、壁や屋根を全て断熱するよりも費用を抑えることができます
窓の断熱リフォーム
窓の断熱リフォームには2つの方法があり、それぞれかかる費用と効果が変わりますので比較してみましょう。
窓交換
今ある窓の枠はそのままにして新しい窓に交換する方法です。
詳しくはこちらをご覧ください。【内窓】工事費込みの価格
内窓設置
今ある窓はそのまま残し新しい窓を取り付けて二重窓にする方法です。
詳しくはこちらをご覧ください。【窓交換リフォーム】工事費込みの価格
窓交換 | 内窓設置 | |
暖房の熱が逃げなくなる | 〇 | 〇 |
結露がなくなる | 〇 | 〇 |
トリプルガラスが選べる | 〇 | |
防音ができる | 〇 | |
費用 | 高 | 低 |
工事時間 | 1窓あたり約半日 | 1窓あたり約1時間 |
暖房の熱が逃げなくなる効果の高さはリフォームの方法ではなく、ガラスの種類とサッシの素材によって変わります。
ガラスの種類 複層ガラス<Low-E 複層ガラス<トリプルガラス
- トリプルガラス 3枚のガラスが組み合わされたガラスです。現在国内で最も優れた断熱性能を備えています。
- Low-E複層ガラス 2枚のガラスの内一枚にLow-E金属膜がコーティングされている基本の複層ガラスより断熱性の高いガラスです。
- 複層ガラス 2枚のガラスの間の空気層が熱の伝わりを抑える基本の複層ガラスです。
サッシの素材 アルミ樹脂複合サッシ<樹脂サッシ
最も断熱性の高い組み合わせは窓交換でする樹脂サッシとトリプルガラスの組み合わせです。
玄関ドア・勝手口ドアの断熱リフォーム
玄関ドアと勝手口ドアにも断熱できるドアがあります。ドア本体に断熱材が充填されていることに加え、ガラス部分には複層ガラスが使われています。
玄関には長時間いないので住宅全体の断熱にはそれほど効果がないと思われるかもしれませんが、玄関からの冷気はリビングのドアと床の間の隙間からリビングにも侵入します。また、せっかく窓断熱をしてある住宅でも、玄関や勝手口ドアが断熱されていないと、その部分から熱が逃げて行ってしまいます。
家中の窓と玄関や勝手口ドアが断熱化されていると、熱が逃げていく量を極力抑えられるので、家の中に暖かい空気が循環します。
その結果、暖房をしている部屋と暖房をしていない廊下や玄関、暖房をしている時間帯としていない時間帯の温度差が抑えられ、快適な温熱環境が調います。
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遮熱対策
遮熱対策には、屋根のリフォーム、遮光カーテン、窓のリフォームが挙げられます。
屋根のリフォーム
屋根に遮熱機能のある塗料を塗装する方法です。塗料で光を反射させ、室内への熱の侵入を抑えます。塗料のグレードにもよりますが、一般的な塗料より高価であることに加え、断熱効果がありません。
遮光カーテン
最も手っ取り早く遮光対策できる方法です。ただ、遮光カーテンは、遮熱効果が高くなればなるほど、光を通さなくなるので、朝日が全く室内に入ってきません。朝日を浴びて目覚めたいという人には向いていないかもしれません。
窓のリフォーム
遮熱対策にも窓が役立ちます。窓ガラスに使われるLow-E複層ガラス、トリプルガラスには、遮熱の働きをするタイプのガラスがあります。
夏の強い陽射しを反射させて室内に侵入させないという働きの他に、紫外線をカットする働きもあります。
エアコンが効率よく働くようになるだけではなく、夏は帰宅すると家の中がムワッとしている、冷房のタイマーが切れると暑くて寝苦しくなり目が覚めてしまうといったようなことがなくなります。
窓のリフォームの方法は断熱と同じで窓交換でも内窓設置でもLow-E複層ガラス遮熱タイプを選べば、遮熱効果も得られます。
断熱にも遮熱にも複数の対策があります。その中で、窓のリフォームでの対策は断熱・遮熱のどちらにも効果があることと、家全体の断熱しフォームに比較すると費用を抑えられる良さがあります。